翌日配送の副作用

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メルカリを始めてから、もう随分になる。

断捨離だの何だのと世間は言うが、要するに家の中の要らないものを金に変える。
それだけの話だ。

中古屋なら買い叩かれるものでも、梱包・発送・客対応をすべて自分でやる手間さえ厭わなければ、驚くほどの値がつく。

おまけに、こんなもの誰が買うんだ、というものまで売れる。
自分にとっては捨てる一歩手前の物を、どこかの誰かが探している。
世の中は広い。

だからサービスにはかなり感謝している。

ただ、たまに腑に落ちないことがある。

出品するとき、「発送までの日数」という項目がある。

この欄には基本的に「4〜7日で発送」と書く。
仕事もあるし、人間には家に帰って何もしない権利もある。
梱包材を買いに行く気力が湧くまでには、それなりの周期というものがあるのだ。

ところが購入から二日くらいすると、
「発送まだですか?」
と来ることがある。

文明の始まりから今日までを思えば、二日など取るに足らない時間のはずだ。
それでも、画面の向こうでは随分待たされたことになっている。

しかも、こういう人が一人ではなく、それなりの頻度でいる。

「申し訳ございません、もう少々お待ちください」

と、こちらは反射的に頭を下げる。

誰も殴りかかってきたわけではない。

怒っている風でもない。
ただ淡々と「まだですか」と聞いてきているだけだ。
それなのに、なぜか毎回、こちらだけが恐縮している。

四〜七日と書いてあるものを二日で問い詰められて、どうにも座りが悪い。

とはいえ、二日で「まだですか」と思う感覚にも、心当たりがないわけではない。
世の中の物流が便利になりすぎた。

ネットで買えば翌日に届く。
朝頼んだものが、その日の夜に来ることさえある。

よく考えるとかなり異常なことである。

昨日まで埼玉か千葉の巨大な倉庫にあった何かが、今日は自分の玄関にある。
その間に、商品を取り出す人、箱に詰める人、仕分けする人、トラックを運転する人、家まで持ってくる人がいる。

こちらがやったことといえば、布団の中で親指を二、三回動かしただけである。
魔法としてはずいぶん地味だが、仕組みとしては相当無茶をしている。

翌日に届くようになると、翌日が普通になる。
普通になると、二日は遅くなる。

そのうち朝に注文して、夕方には配送状況を見ている。
物流の速度が上がったぶん、人間まで気長になるわけではない。
むしろ待てる時間のほうが短くなっている。

その速度感が、個人が家で売っている中古品にまで少し持ち込まれる。

「発送まだですか?」

まだ購入から翌日である。

こちらはまた「申し訳ございません」と返す。

便利な世の中というのは、待たなくていい世の中だと思っていた。
どうも、待てなくなる世の中でもあるらしい。

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