たとえばこのあと、「明日、君だけ死にます」と告げられたら、たぶん俺は納得しない。
というか、普通に怒ると思う。
死ぬこと自体はまあ仕方ない。
老いも病もあるし、理屈としては受け入れられる。
でも、それが「自分だけ」だと話は別だ。
なんで俺だけなんだと思う。
別に大きな善行をした覚えはない。
でも、日々の細かいところではそれなりに気をつけて生きてきたつもりだ。
混んでる店では食べたらすぐ席を立つようにしてるし、コンビニのトイレも借りたらなるべく何か買うようにはしてる。
短い横断歩道も信号はちゃんと守るタイプだ。
そういう特に表彰されるほどでもないが、かといって即処分されるほどでもない人間に向かって、いきなり「君だけ明日で終わりです」と言われたら、納得する以前に、まず話を疑う。
でもこれが「明日、地球に巨大隕石が落ちて、人類は全滅します」って話になると、なぜかちょっとホッとする。
ああ、みんな死ぬのか。
ならまあ、しょうがないな、と思える。
さっきまでスーパーで長ネギを選んでた人も、バスでイヤホン落としてた大学生も、ローンの残高を見てたおじさんも、全員まとめてそこで終わる。
そうなると妙に心が静まる。
もはや怒る相手もいないし、比較対象もない。
自分だけ死ぬのは納得いかない。
みんな死ぬなら仕方ない。
この感情の差はどこから来るんだろうと考えてみて、
結局、「取り残されるのが嫌なんだろうな」という結論に落ち着く。
みんながまだビールを飲んで騒いでいるのに、自分だけ終電だからと帰らされる。
残ってる人たちが楽しそうにしてる想像をしながら冷えたホームで電車を待つ、あの感じ。
それならいっそ、ビールもテーブルも電車も全部まとめて消えてくれた方が気がラクだ。
明日、本当に「みんな死にます」と言われたら俺はどうするだろう。
たぶん、長ネギを買って帰る。
だって味噌汁の具がないと困るし。

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