やはりYouTubeというのは便利なもので、知らない他人の顔を知り合いのような距離で眺められる。
芸人も医者も起業家もみんな対面で語りかけてくる。
画面の向こうでは人が笑い、黙り、喉を潤す。
そういう日常の細切れが世界のどこかの部屋で再生されたり止められたりしてるのだ。
ちょっとコーヒーを取りに行こうと思い、動画を一時停止する。
画面に残されたのは目が半開きで口元が中途半端に開いた、どこか虚無を見つめる顔。
本人は熱く語っていたその途中だったはずだ。
人生のこととか、趣味のこととか、昨日焦がしたカレーのこととか。
悪意はない。ただ止めただけだ。
それでもこちらが何か失礼なことをしてしまったような気分になる。
これが美人やイケメンだと評判の人ならなおさらだ。
美というものに対して自分が無礼を働いた気がする。
人間なのだから瞬きもするし、口も半端に開く。
だが動画はその事情を一切考慮しない。
0.1秒の油断を切り取って「これがあなたです」と無言で突きつけてくる。
だから俺は不意打ちに遭ったその顔をそっと再生し直す。
数秒だけ進めて今度は無難そうなところで止める。
たぶんこんな顔だったはずだ。
確信はない。ただ変でなければそれでいい。
世の中には意図しない瞬間に止まってしまったままの人がきっといる。
会話の途中で誤解されてそのまま記憶に残ってしまった人。
寝起きの声で電話に出て永遠に「やる気のない人」ラベルを貼られた人。
SNSで一文だけ切り取られてそのまま人格が決定された人。
どれもただの一時停止だ。
再生すれば続きはある。けれど現実ではその再生ボタンが見つからないことも多い。
変なこだわりではある。
それでもやっぱり止めるならせめて笑っているときがいい。
そうすればこちらも気まずくない。

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