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辞書より先の感情

子供の頃の記憶は、情報の断片と過剰な想像力が混ざり合い、歪んだ形で脳のどこかに残る。とくに言葉は厄介だ。意味より先に、空気が焼き付く。そんなことを、一本の映画が思い出させる。『トイ・ストーリー2』の、あるシーンだった。物語の序盤。窓の外に掲...
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一時停止の顔

やはりYouTubeというのは便利なもので、知らない他人の顔を知り合いのような距離で眺められる。芸人も医者も起業家もみんな対面で語りかけてくる。画面の向こうでは人が笑い、黙り、喉を潤す。そういう日常の細切れが世界のどこかの部屋で再生されたり...
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全滅という安心

たとえばこのあと、「明日、君だけ死にます」と告げられたら、たぶん俺は納得しない。というか、普通に怒ると思う。死ぬこと自体はまあ仕方ない。老いも病もあるし、理屈としては受け入れられる。でも、それが「自分だけ」だと話は別だ。なんで俺だけなんだと...
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日記に向かって手を振る

数年前、日記をつけていた。今書いているようなものとは少し毛色が違う。その日にあったどうでもいいことを、ただ書きつけていくだけのやつだ。きっかけは一日の終わりに訪れるあの漠然とした後悔だった。毎晩のように襲ってくる「今日も何もしてねえ」という...
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観察者の罪悪感について

YouTubeをだらだら眺めていると、いつのまにかペット系の動画にたどり着くことがある。猫が家に来てから一週間の変化を追った動画、小さな子犬が初めておもちゃと出会う様子、ふわふわのウサギが新しい部屋を探索する姿。様々な生き物の日常が、整然と...
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りんごになりたがった人間

七夕の短冊は、人間の欲望を剥き出しにする装置だ。「仮面ライダーになりたい」とか「プリキュアになりたい」とか。そういうのは、願いというよりも、どこか別の存在に変わりたいという衝動に近い。大人になるとそれが、「健康診断で引っかかりませんように」...
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喫茶店にて

都会に足を運んだ際、無意識のうちに「レトロな喫茶店」というワードが脳内検索に引っかかるようになってしまった。誰に言われたわけでもないのに、「せっかくだし」の精神が律儀に芽を出す。育てた覚えはないのに。駅を出て、人の流れに身を任せる。スマホで...
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ケチャップの記憶

夕暮れ時。さほど腹が減っていたわけでもないのに、気づけばハンバーガーチェーンの店内にいた。セットがお得だったので反射的に注文していた。ポテト、コーラ、そして紙包みにくるまれたハンバーガー。包みをめくる瞬間、ほんの少しのときめきがある。何の変...
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判子が押されてから

書類を一通、提出しなければならなかった。メールでのやり取りなので、ちょっと書いて送れば終わるはずだった。ところがその書類には、上司の判子が必要だった。電子印ではない。朱肉を使う、物理的に存在するあの円形のやつだ。書類を印刷し早めに声をかけた...
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穴が空いた日常

パンツに穴が空いた。位置は左横で、さほど目立たないし、機能もほとんど損なわれていない。会社でズボンを脱ぐ予定もない。仮にズボンが爆発してパンツがあらわになったとしても、誰も気にしないレベルだ。むしろ、そのとき気にすべきことはズボンが爆発した...